氷葉
12月は氷点下までいくこともほとんどなく、どこか湿り気のあるようなこのまま春が来てくれるのではないかと期待をもたせるような緩みのある冬だった。
しかし大晦日から徐々にマイナスの世界が顔を出すようになった。大晦日は雪はふらなかったが-6度まで突然下がったために、全てが一気に凍結した。
それは積もる雪とは全く異なるとても静かな美しさだった。木々の葉の一枚一枚に霜が立ちとても鮮明にその輪郭を映し出し、枯れた木の枝たちは白粉を塗っているような上品さで自分の形を縁取っていた。
いつも歩いている路肩のフェンスをよくみてみると、フェンスから羽が生えているかのように親指ほどの霜柱が何本もたっていた。一本一本にさらに毛先があるかのように繊細で、見た目はとても固い。
触れたら刺さってしまいそうに固いものに見えるのだが触れてみると固さを感じる前に崩れ落ちてしまうくらいに柔らかく弱いものだった。強く見えるものが実は弱いというのはよくあることで、そのような女性は魅力的だ。
強く派手にツンと立っていたものが儚くも簡単に崩れてしまう。このような女性らしさに触れた時に男は守りたいという気持ちになるのだろう。
いつもの森へはいると、そこはいつもとは違う景色でとても静かだった。霜で真っ白になった森は別世界のようですべての雑音を吸い込んでいるようである。
どんなに黒いものを入れても灰色にはならずそれでもずっと白さを保っていられるような包容力のある、聖母のような美しさだった。
冬の美しさというのは日本にいた頃には感じられなかったものであり、格別なものがある。
寒さは厳しいがそれには代えられない自然と雪の美しさがある。
アルプスへ行ったらまた違う雪が見られるんだろう。色んなところの雪を、色んな白を見てみたい。それは写真ではなくて生で見た景色。
生で見てみて感じる風と音とその時の空気と自分の目にうつる景色。
本当に凍りついた自然というのは本当に怖いものだとも思うけれど見てみたい。いつかスイスに行ってその世界を肌で感じてみたい。そうしたらもっといい文章が書けそうだ。
ドイツは冬が半年間も続くわけだがようやく折り返し。この厳しさを乗り越えてからやってくる春にはすごく大きな喜びもあって日がものすごく長いけど暑さの厳しくない夏がやってくる。